
松森士門
1996年生まれ
2020年 東京藝術大学 卒業
松森士門は、作品の「鮮度」を追求するため、エスキースを描かず真っ白なキャンバスに直接筆を置くことから制作を始める。かつてはビビッドな色面的表現を主としてたが、現在はアカデミズムへの憧憬を経て、対象を見る「純度」を試されるような、筆致の重要度に価値を置く作風へと変化。その制作過程では、複数枚の作品を同時進行で、長い時間をかけて描き進めていく。常に社会との関わりの中で自己を更新し続ける作家の表現が、今後どのような展開を見せるのか、目が離せない。

作品を作り始めたのはいつ頃ですか? そのきっかけや影響を受けた出来事があれば教えてください。
本格的に制作を始めたのは大学に入学してからだと思います。絵を学びたくて美大を目指していました。最初は自分の価値観がどこにあるか曖昧で画集を見たり失敗を繰り返しひたすら探り続けていて、浪人中に自分のやりたいことが明快になりました。ただ受験期間は課題ありきの制作だったので、入学後には受験や課題のことを忘れ純粋に作品と向き合えました。
アーティストを目指すようになったのは、どのような経験や思いがきっかけでしたか?
月並みですが、自分の作品が残ったらいいなと考えていました。いい絵を見た時にムカつくことがあるのですが、何十年何百年も前の巨匠と呼ばれる人たちの作品を今見ても同じ感覚があって、自分もそうなれたらと思います。あと自己顕示欲があるからです。

現在の作風に至るまで、どのような試行錯誤を重ねてきましたか?影響を受けたものや、転機となった経験があれば教えてください。
以前は画面の構成要素としてストロークを残し、ビビットな色で色面的に図像をおこしていました。ですがアカデミズムに対する憧れはずっとあって、一度これまでの表現を全部捨てて描いてみたら対象を見る純度を試されている感覚がありました。
今では具象性が低い方が画面を探る可能性が広がると考え、何か分かりにくい中にある筆致の重要度に価値をおくようになりました。
作品に共通するテーマやコンセプト(アーティストステートメント)について教えてください。
現代では写真やデジタル画像が簡単に普及でき、液晶から得られる情報の重要度が高まっているように感じます。そのため、どんな面白い物が描かれているかという具象性や、抽象画であればグラフィック的なものが受け入れやすい状態にあると思います。ただ僕は古典近代の絵画や油絵具というものに対してのロマンに胸を躍らせてしまう人間なので、マネのようにテーブルに置いただけのアスパラガスを描く姿勢や、ロスコのような意志の宿る豊かな絵の具の表情を自分も追っていきたく制作しています。普遍的な美しさは画面にどんな言語情報がのっているかではなく、作家のどんな眼差しをのせられるか模索していく事だと考えているので、それを貫くぞという老害化への決意表明みたいなものです。

これまで影響を受けた作家や表現はありますか(絵に限らず、漫画・映画・音楽など)
フランク・ステラは影響を受けた作家の1人です。実際にブラックペインティングを見た時に感動した事もそうですが、作品の変遷が衝撃的で作家の生き方として憧れがあります。初期はミニマルな作品を制作しながら徐々に派手になり、最終的には子供の工作を巨大化したような作品へと変わっていく、評価をされても新たな自身の表現を探求していく姿勢は作家としての理想像だと思います。
作品のアイデアは、日常のどんな出来事や風景から生まれることが多いですか?
正直モチーフとなるものは何でもいいと考えていて、絵になるものだからというよりどう絵にするかを向き合った方が盛り上がります。なので日常の特別なものではなく些細な景色だったり、身の回りのものを描く事が多いです。なるべく日頃から視界に入るものを描く感覚で見るようにしていて、筆運びの事について考えたりしています。今回の展示では筆運びや画面を見る意識の流れについて考えた事とモチーフになっている飛行機雲が結びついたので、稀に新しい試みとモチーフの親和性が高い場合はシリーズとして描いたりもします。

今回、「アート解放区 人形町」に出展されている作品について教えてください。
今回展示した作品は線を引くことについて考えていた時に、飛行機雲が参考になるのではないかと思い描いた絵です。筆で線を引く場合、引き初めは濃い線で徐々に薄まっていきます。飛行機雲の場合は逆で先に引いた線は風に流され薄れていき、新しいものほど濃く鋭い線になります。筆でも同じ事は出来ないかと思い、線の終着点にいくほど濃く強い意識をもっていく事を試みた作品群になります。
作品を見る人に、「これを感じてもらえたら嬉しい」というポイントがあれば教えてください。
絵を描かない人にも絵を描く感覚を重ねてもらえたら嬉しいです。タッチやストロークには身体運動の痕跡が残るので、目で筆跡をなぞって少し手が動いてしまうような鑑賞をしてもらえたら今度は絵の具の物質にも目が移って画面の全部で楽しんでもらえるんじゃないかと願っています。
今後の制作において挑戦したいことや意識したいことはありますか?
もっと大きい作品にも向き合わないとなと考えています。小さい作品を描く事が好きで、画面が小さい方が一つのタッチの出来不出来が大きく影響するので画面に触れる緊張感が心地良いと思っていました。でもそれだけだと自分の視界に収まる空間に対して対象のおいかたが限定的すぎるような気がしてきて、もっと大きく動いて捉え方の幅を広げていきたいです。
1月9日(金)ー1月31日(土)開催:アート解放区人形町「FLUID EDGE」※閉幕いたしました

「FLUID EDGE」
会期
2026年1月9日(金) ~ 2026年1月31日(土)
営業時間
平日:12:00-19:00 土曜日:11:00-19:00
休廊:日月祝
会場
アート解放区 人形町
東京都中央区日本橋人形町3-6-9 SPACE ANNEX 1F, B1F
ARTIST
【1F】木村美帆、山谷菜月、マシューマロー
【B1F】塩見真由、友成哲郎、池伊田リュウ、三塚新司、松森士門